ドラえもん電子書籍化に寄せて: ドラえもんと私
書こう書こうと思いながら随分時間が立ってしまったけど、ドラえもん電子書籍化のニュースがあった。
「ドラえもん」電子書籍化、てんとう虫コミックス1〜45巻とデジタルカラー版Vol.1〜141を配信開始 -INTERNET Watch
現在既に電子書籍版が販売されており、気付いたらKindle版も販売されている。
元々 キンコーズで電子書籍用に1冊108円で断裁してもらったお話と個人的な自炊のお話。 - ゆず日記 で電子書籍への移行を進めていて、ちょっと前の50%還元セールの際にマンガもKindle版があるものはすべてKindleで買い直し、手元のコミックスはマーケットプレイスとブックオフで売ってしまった。
OreillyはEbook Storeがあるし、他の技術書や新書はそのまま電子書籍版を買う。もし電子書籍がなければ紙の書籍を買って断裁しScanSnapで取り込んで...とすっかり本棚不要の生活になった。
出版社により書籍との遅れがある場合もあるが、自分が買っているマンガは最新刊発売日の0時頃に手元のKindleに配信されるし、自宅, オフィス, カフェ, 何処でもKindleから600冊強の書籍にアクセスできる環境が魅力である。
元々持ってたデカい本棚は引っ越しの際に処分した。
ちなみに、ジョジョのコミックスはアニメの影響もあってか1〜7部が高値で売れてしまった。 10年以上前から全巻新品で購入していた品で、(63 + 17 + 24)巻 * 420 = 43,680円掛かっていたが、30,000円で売却できた。 文庫本ベースのKindleモノクロ版を全部購入すると34,600円、50%ポイントセール時に買ったので携帯電話会社風にいうと実質17,300円だったので、手元のお金が12,700円増える形でKindle版に移行できたことになる。
カバー裏の荒木先生のコメントや、「あーん!スト様が死んだ!」とかが読めなくなるのはデメリットだが、本棚スペースが不要になるメリットの方が自分には大きかった。
15年程前から紙媒体で揃え続けていたけど、収支プラスで移行出来るとは不思議なものだなぁと思った。
話を戻して、これで自分にとっては本棚に最後まで残り続けたドラえもんコミックスとはお別れとなるので、ちょっとの間SF(すこし・ふしぎ)なドラえもん語りをしたい。
ドラえもんとの出会い
初めて読んだマンガはドラえもんだった。
何歳だったかはもう憶えてないが、物心ついた頃から家にはドラえもんがあった。
カバーが無いものや、汚れているものがあったので、兄の為に中古本も含めて親が買ってくれたものかも知れない。
最初はコマを追う順番も分からず、漢字のルビも言葉の意味もよく分からなかったが、少し大きくなってからは弟に読み聞かせをしたりしていた。小学時代の国語の音読がスラスラ読めたのはドラえもんのお陰だ。 夏休みにチョコアイスを食べながら読んでて落として5巻を茶色く汚してしまったのもいい思い出だ。
いろんなことを学んだドラえもん
日食*1 太陽と月の視直径の違いを知ったのはドラえもんである。
盲点*2の存在を知ったのもドラえもんである。
刷り込み*3も、亡命*4も、光ファイバー*5も、
水が酸素と水素から構成されていること*6を知ったのもドラえもんである。
あれもこれもすべてドラえもんである。
信長の野望で日本史を学び、桃鉄で地理を学ぶというが、ドラえもんは理科も社会も学べてしまうのである。凄い。
スネ吉の広角レンズの絞りの話*7なんて一眼レフを買った今年になって初めて意味が分かった。
のび太とスネ夫がお互いにミサイルを所有しているシーンが冷戦*8を皮肉ったものだったりと、後になって気付かされるネタも多い。
ちなみに、しずちゃん*9が人間製造機*10の話でなぜあんなに怒るのか分かるまで10年位掛かった。
脱線
ちなみに幾つか版を重ねる中で、改変された内容がある。
28巻: 「なぜか劇がメチャクチャに」 は内容が大きく書き換えられている。
実家にあった版では、チビ黒サンボの劇を行うシーンがあるのだが、10年前に買い直した版ではそのシーンがまるまるカットされてしまっている。
参考: http://www.geocities.co.jp/Playtown-Dice/6159/d-28.html
他にも、ごみすてばがごみだしばになっていたりと、ドラえもんも差別問題による影響を大きく受けている。
参考: 復元光線 Case4
別にコレくらいいいのでは... と思うものも多いのだが、読者数が多く影響が大きいだけに気を遣わなければならないことも多いのかと思う。 元のものが読みたければ、今では藤子・F・不二雄大全集に、てんとう虫コミックス未収録の話も含めて全話掲載されているのでこちらもオススメ。(早く電子書籍化して欲しい。)
- 作者: 藤子・F・不二雄
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2009/07/24
- メディア: コミック
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多分1番好きな話
23巻: 「ぼくよりダメなやつがきた」 である。のび太よりダメな多目くんが引っ越してくる話だ。
- 作者: 藤子・F・不二雄
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 1981/12/19
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多目くんは名前通りダメな子で、のび太より勉強も運動もできない。
先生やジャイアンからいつもいびられてたのび太は、自分よりダメなやつが来たことで社会的カーストの最下層から脱するが、今までの劣等感の反動からか今度は多目くんを馬鹿にしだす。
一見仲良さそうに一緒に宿題をしだすが、モクモク頑張る多目くんと、すぐに飽きだすのび太。ジャイアンに野球に誘われるが、自分は参加したくないので多目くんを代わりに推薦する。
見かねたドラえもんが、のび太の行動を省みさせることで過ちに気付かせ、ジャイアンに野球の責任を問われてバットで殴られそうな多目くんを、のび太が助けに入るという内容だ。
この話は子供ながらに深く考えさせられた。
また、この話の苦手な勉強でも投げ出さずにモクモク努力する多目くんの姿勢にも学ばされた。*11
藤子先生はよくインタビューで「のび太は私なんです。」という話をしていた。 藤子先生も小学生時代、勉強も運動もダメで、ドジでよく先生に叱られていたという。全国にいる悩める子供たちが、つらい時でもドラえもんを読んで、自分よりドジなのび太を見て元気を出して欲しい。といったメッセージだった。
私も小学生時代、勉強こそそれなりには出来たが運動がからっきしダメで、小学生時代に運動が出来ないというのは社会的カーストの下層になりがちである。当時はつらい思いをすることが多かった中で、のび太に自己投影していた1人として、ドラえもんに救われ、知識も得て、のび太の行動から学ぶ。
そういった経験をドラえもんは私に残してくれた。
〆
流石にこのコミックスを処分してしまうのはしのびないので、実家に送って取って置くつもりだ。 ドラえもんが連載されていたのが19xx-19xx年、自分の生まれは1984年。それでも時代の変化に何の抵抗も無く読むことが出来た。 今の子供達がドラゴンボールを普通に受け入れてくれるのと同じくらい、違和感なく受け入れてくれる作品だと思う。
それはコミックスという媒体から電子書籍になっても変わらないものだと思っている。 いつか子供にもKindleとセットでプレゼントしたい。
最後に小学六年生の3月号に頻繁に掲載された話、つまり小学生がドラえもんの掲載誌から卒業する最後の号の話。また、大山のぶ代版アニメドラえもん最終話としても放送された話である、「45年後・・・」*12から、あのセリフを引用させてもらって〆たい。
きみはこれからも何度もつまづく。 でもそのたびに立ち直る強さももってるんだよ。
私はまた一つ、ドラえもんという作品に救われたのかもしれない。
ぜひ ドラえもんプラスや大長編ドラえもん、藤子F不二雄全集のKindle化も期待して筆を置こうと思う。
それではまだどこかで。